会社のイベントの準備に追われている中、「最後のくじびきの抽選箱は何を使うの?」とイベントを仕切るシンガポール人に聞いた。
彼は、これだよ、と足元にある、大きすぎる段ボール箱を見せてきた。
私は彼を鼻で笑い、「そんなんじゃダメダメ、抽選箱は私が用意するね。」と提案をした。実に、軽い気持ちで。
そして私の、抽選箱に支配される毎日がはじまった。
まず、軽い足取りで、オーチャードの地下にある100均ならぬ、2ドル均一の「ダイソー」に行き、ハローウィングッズやクリスマスグッズが並んでいるコーナーを見ながら、「もうすぐハローウィンだな。四季のないシンガポールはイベントごとでしか時を感じることができないな。」なんて関係のないことを考えながら歩いた。
シンガポールに5年間すんでて、お弁当なんて一度も作ったことがないにも関わらず、私にお弁当箱を手に取らせる「ダイソー」の魔力に侵されながらも、久しぶりに訪れたダイソーを楽しんでいた。
おもちゃの棚を通り過ぎ~、文房具の棚を通り過ぎ~、かわいい箱がおいてある棚かな~とおもいながらも通り過ぎ~、ひげ眼鏡や、ビンゴカード、おもしろタスキがおいてあるイベントグッズの棚を見つけ、そこで立ち留まった私。
ゆっくりとお目当ての商品を探し出す。求めているのは、そう、↓こんなやつ。忘年会や、会社の送迎会や、新年会や、宴会ごとに欠かせない、抽選の名わき役、抽選箱。
「あれ?ない。」
このダイソーで、欲しいものが手に入らなかった経験がない私は、
一瞬の動揺をまわりの買い物客に悟られないように、もう一度同じ棚を上から下までゆっくりと見た。
「ない。」
平日の夕方、人でごったがえすオーチャードのダイソーを、1時間ほどうろついたところで、私は挫折した。
悪いのは抽選箱を置いてなかったダイソーではない。ダイソーからお目当ての品を探し出せなかった私だ。
1時間ほど私と一緒に店内をうろついていたお弁当箱は買う気になれず、ほかの棚にそっと置き、店を去った。
家に帰ってから、試しに楽天市場で、「抽選箱」と検索してみた。
私が探し出せなかった品が、ネット上に所狭しと並べられている。
でもここはシンガポール。日本で買って送ってもらうにはイベントまで時間がなさすぎる。
抽選箱を英語に訳すと「Draw Box」。
Draw Boxをシンガポールの楽天市場のようなショッピングサイト「Lazada」で検索した検索結果↓
かすりもしてない。。
くじ引きを英語に訳すと「Lucky Draw」。試しにLucky Drawで検索した結果がこれ↓
なんか近くなってる!
ならばくじ引きの箱を英語で訳し「Lucky Draw Box」で検索。
私が求めていた抽選箱にたどりつけるはずだ、と検索した結果↓
お年玉袋。。
次の日、私は重い足取りで違うダイソーに行った。
私はそれでも信じたかった。日本が誇るダイソーに、宴会にはつきものの抽選箱が、シンガポールでも手に入る、と。
今回は、ハローウィングッズにも、クリスマスグッズにも目をむけず、イベントグッズの棚さえも素通りし、店員のみを探しだし、品出ししている店員に問いかけた。
「こんなのある?」と。
私の携帯にうつしだされた楽天市場の数ある抽選箱をちらみした店員は、そっけなく「NO」と。
こんなことで私はめげない。シンガポールの小売店で店員がそっけないことなんてよくあることなんだ。
私は足早にほかの店員を探し出し、同じ質問を繰り返す「これ、ある?」と。
はじめに聞いたおばさん店員よりも若い店員は、「こっちにきて。」と私を誘導した。
これですべての問題は解決した、彼女は私を抽選箱の棚に誘導しているのだ、と安心しきってついていく私。
若い店員は、私がさっきすでに聞いたおばさん店員のところに連れていき、「この人がこんなの探してるらしいんだけど、ある?」と聞き出した。
おばさん店員は私をじろりとにらみ、「I said NO!」
おばさんを信じず、ほかの店員に聞いたことが一瞬でばれてしまった。
私は、それでもこのおばさん店員を信じなかった。
抽選箱は折りたたまれて売られているはずで、箱の形で売られているわけではないだろう。
この店員たちは、自分が働く店に抽選箱が売られていることをたぶん知らない。
そう思った私は、くまなく店内を物色しはじめた。
私も昨日はどこかで、箱型になっている物体を探していた。だから見つけ出せなかったに違いない。
逃げた犯人の指紋を探す刑事のように、くまなく1列1列ダイソーの棚をみていると、さきほどのおばさん店員がうしろから、「NO NO」と私にせまった。
2回も確認され、その品物は、ない、と言い続けたにも関わらず、まだ自分でしぶとく探す私に、おばさん店員はしびれを切らしたようだ。
そのあとも中国語でまくしたてられ、私は客なのに、逃げるようにダイソーから出た。
その時にあわてて買った品↓ かわいいけど、抽選箱ではない。
ここからの1週間、私の脳は、完全に抽選箱に支配された。
そのあと入ったスーパーマーケットで、このお菓子の缶を抽選箱にしようかな、と思いつき即座に購入してしまうくらいに。
家にあるサラダボールをじっと見つめて、抽選箱に代用できるだろうか、と考えるくらいに。
もう、箱をみるたびに「抽選箱」に見えてくる。
他にイベントのためにやるべきこと、考えるべきことはたくさんあるのに、私はどうしても手に入れたかったのだ。
シンガポールで、抽選箱を。
全くめぼしい抽選箱が見つけられないまま、このままだとはじめにシンガポール人が用意した段ボール箱を使うはめになるのだろうか、と思っていた矢先、ドビーゴードにある「Spot Light」というアートグッズや、手芸グッズが置いてあるお店で、丸い箱を見つけた。
この箱がSGD16(約1,400円)のが、高いのか安いのかを考える頭はもう私にはなかった。
即座にこの箱を買い、カッターで穴をあけ、まあるい抽選箱が、イベント前日にやっとできあがった。
地味。。。。
これをイベント担当のシンガポール人に恐る恐る渡すと、「あ、そこに置いておいて。」と全く感想をのべられなかったが、私は語りたかった。これにたどりつくまでの道のりを。
結果
日本からシンガポールに駐在などで来る際には、あらかじめ抽選箱を持ってくることをおすすめします。
送迎会、忘年会、いろんな催しがある日本社会inシンガポールで、きっと役にたちます。