娘よ、あなたがシンガポールに降り立った、5年前の今日を覚えているかい?
2人きりで、無人の空港、無人の飛行機に乗ったことを。
シンガポールの薄暗い空港で、銃を持った警官たちに迎えられたことを。
成田でうけたPCR検査の結果が本物ではない、と難癖をつけられて足止めをくらったことを。
入国できないかもしれない、と泣いた私の横で、赤ちゃんなのに不安そうな顔をしたあなた。
空港の外と中で、ガラス越しに初めて会ったパパのことを。
どこに宿泊するかわからずにバスに揺られた、あの時間を。リトルインディアのさびれたホテルに到着したことを。
宿泊先の部屋を掃除し、シーツを変えた2週間。毎食弁当が部屋のドアノブにかけられてたあの日々。
閉ざされたホテルの一室ではじめて寝返りを覚えた娘は、今では走り回り、二か国語をあやつるまでに成長してる。
たったの5年前なんてね。
ずいぶんと現実離れした数年間を経て、5年分成長したあなたと、いまここにいる奇跡を想う。
