
娘の新学期がはじまった。
私は仕事だったので、新学期初日の送迎は旦那が担当。
朝から張り切って、緊張している娘に向かって、「友達たくさん作るぞー」なんてうざい追い打ちをかけていた。
「どんな様子か教えてね」という私には、「君は心配性だな。学校は楽しいところだ。大丈夫に決まってるよ」なんて言っていたくせに。
仕事中に、旦那から電話がかかってきた。
「娘のクラスの雰囲気がよくない」と言う。
同じクラスの子どもたちは、娘が登校してきても駆け寄ってこない。
先生に話しかけても、忙しそうにされる。
「行かないで」と腕を引っ張る娘をテーブルに座らせて、「絵を描いてなさい」と言って帰ってきたらしい。
不安そうな娘の顔が浮かんで、私まで悲しい気持ちに引きずられそうになる。
旦那は、「見てられなかった」「かわいそうだった」「心配だ。どうしよう」と散々うろたえたあと、
「I think we should ask principal to change her class」
と言った。
え? 今なんつった?
英語で会話している途中に、あまりにも予想外のことを言われたので、私は自分のリスニング力を疑った。
プリンシパルって、校長のことでしょ?
校長先生に、娘のクラスを変えてもらうよう頼むって言ってんの?
まじで?
新学期初日、登校してたった10分で?
さっきまでの憂鬱な気持ちは嘘のように晴れ、とても愉快な気持ちになった。
何度も保育園を変わり、そのたびに泣きじゃくる娘を置いて帰ったこと。
仲のいいお友達が転校してしまって、ひとりぼっちでいる娘を見たこと。
給食をひたすら食べなかったり、外遊びを拒否したり、何度も頭を抱えたこと。
去年の今頃だってね、クラスで一人だけ泣きじゃくり、私の髪の毛を引っ張って離さなかったの。
頭一つ以上大きい同級生たちの中に、娘を置いてきて不安な私にあんたはなんて言った?
笑いながら、「君は心配性だな。」と言ったよね。
娘は、一歩距離を置いてみると、清く優しく美しく成長している。
こんなに成長していて、はい、花丸でしょう。
でも一歩ずつ距離を近づけていくと、こちらが歯がゆくなってしまうくらい繊細な心や、考えすぎてしまう性格が見えてくる。
娘の悲しい気持ちや、不安な気持ちは、彼女のもの。
彼女は彼女のペースで、やり方で、自分で咀嚼して、また強くなっていくんだからね。
今、私たちにしてあげられることは、両手を広げて待っていることじゃないのかしら。
驚くほどうろたえ、なんとか娘の不安を取り除いてあげようとする旦那に、私は冷静に言った。
「It's just the first day of the year.」まだ、はじまったばかりだよ。