シンガポール入国まであと二週間。私はまだ見ぬ新居に赤子を抱えて入居し、そこで14日間缶詰になる。その間は、すでにシンガポールにいる旦那は私たちに会えない。
自宅待機で帰れることになった話は↓
昨日旦那に、「そういや家にはいるときの鍵ってどうすればいいの?」と聞いたところ、「暗証番号を入力するハイテクタイプのオートロックドアだから、鍵は必要ないさ。暗証番号を教えておくよ。」と得意げに言っていたのに、今朝になって「メインのゲートのドアには鍵がいるから、日本に鍵送るから!」と。
大丈夫かよ、と不安になる。
私たちは無事に国に入れるのか、そして無事に家に入れるのか。
旦那に不信感を募らせている矢先に再度旦那から電話が。うきうきが電話口から伝わってくる声で、「君たちが心地よく自宅で隔離生活を送れるように、バルコニーをリビングルームにしておいたから。」と。
。。。え?どういうこと?
混乱した頭と、震える声で、「ちょっと見せてもらっていいかな?」とビデオ電話に切り替えたところ、バルコニーには、ソファ、テーブル、テレビが所狭しと並んでおり、それはまさにリビングルーム、茶の間。言葉通り、バルコニーはリビングルームになっていた。
そして、リビングルームにはなにも家具はなく、がらんとしたただの広場になっているではないか。
。。。なんで?
とりあえず冷静を装って、「なんでこんな配置にしたのかな?」と聞いてみると、「娘が広々としたリビングで遊んでるとき、君がバルコニーでビールを飲みながらゆっくりと外の景色を見れるようにさ。」というではないか。
えーっと、あんたの娘は4か月でまだ寝たきりであり、私はその寝たきりの赤ん坊に翻弄されるので、ゆっくりとビールなんて飲んでらんないんですけど。
とりあえず簡潔にダメ出しをし、元通りに直しておくことを指示した。
ダメ出しを食らった旦那はしょんぼりとし、「だって楽しみすぎてなにをしたらいいかわからないんだ。」と。
私は愉快な気持ちになる。旦那は、まだ見ぬ娘の成長具合も上手く把握できず、長いこと会っていない妻が母親になった図も上手く想像できていない。
それでもバルコニーをリビングに改造することを思いついちゃうほど、何かをして迎えたいんだ。
彼はまだ知らない。赤ちゃんという生命体に、どんなに自分の時間を費やさなければいけないかを。いつ泣くかわからない時限爆弾のような物体と、共に過ごす毎日の疲労を。そして、それでもそんな赤ちゃんの笑顔ひとつで最高に幸せになれちゃう事実も。
もうちょっとで、彼はやっと父親になるんだろう。